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ようこそ野口体操の世界へ

 この野口体操公式ホームページでは、野口三千三(野口体操創始者・東京芸術大学名誉教授 1914〜1998)及び野口体操に関する情報をお伝えします。加えて、野口三千三の意志を継いで野口体操をトータルに伝えている「野口体操の会」の活動報告や最新情報もお伝えいたします。


 野口体操は、とりわけ1960〜70年代から、教育・哲学・芸術関係の方々を中心に浸透してゆきました。21世紀を迎えた現在、野口体操が育んできた独創的な身体観は、多くの人々の関心を集めています。野口体操を実践の場で伝えている昨今、私は「野口体操ルネッサンス期」の到来をひしひしと感じています。


 トップページにありますロゴマークは、野口体操の将来を祝福してグラフィックデザイナーの杉浦康平氏より寄贈されました。このホームページが皆様にとって野口体操へのよき道標となるよう編集を続けていきたいと思っています。

野口体操の会 主宰:羽鳥 操


「野口体操の会」総会に寄せて

 本日は手作りの法事にご参加いただき、ありがとうございます。大勢の皆さまと野口三千三先生のお墓参りが出来ましたこと嬉しく思っています。
 まず、このたびの「野口体操の会」発足にあたって、経過をお話ししたいと思います。これまで折に触れて、各方面の方々から、志を一つにして活動するNPO法人や一般財団法人などの法人化をすすめていただくことがありました。
 その都度、考えてみましたが、踏み切れずに時間ばかりが過ぎていきました。
 気がつくと、野口先生を知る人も減り、野口体操に携わっている私たちにも高齢化の波が押し寄せています。このままでは野口体操は消滅しかねないことへの「勿体なさ」を感じているのは、私ひとりではありませんでした。と言ってもバラバラの個人のままでは、力にならないことを痛いほど感じています。
 思い返せば、ご存命中、「野口体操の考えに組織は馴染まない!」とおっしゃり続けた先生でした。それでも晩年には、「このままで果してよいのだろうか」
 つぶやきながら一抹の寂しさをにじませていらした姿に接してきました。

 それから数十年後、昨年の秋のことです。小さくてもまとまりのある会をつくりたいという思いを受けとめ、積極的に支えてくださる方に恵まれて準備を進めてきました。
 まずは、年賀状の交換をしている方のうち七〇名ほどの方にお知らせしました。昨日までで六一名の方が、会員に名乗りをあげてくださいました。
 こうした流れの中で、長年の懸案であった野口体操の組織化が実現できたことに、野口先生も素直に喜んでくださっていると思いたいです。
 ここで改めて申し上げるまでもないのですが、野口体操は先生の戦争体験が大本となって生まれた体操です。身体論です。いの一番に、全体主義にならないことが挙げられます。つまり個を大切にすること。こうした考え方から次のことが導かれています。たとえば、ユニフォームはつくらない。一つの基準だけで人を見ない。体操でかけられる独特の号令は命令に従わせるのではなく、ある範囲のなかで合わせながら、それぞれに気持ちよさを見いだすための手引きでした。
 ある意味で組織化とは相反する考えに裏打ちされた体操です。
 そうは言っても先生ご自身が八〇歳代にさしかかった時に、こんなことをおっしゃっていました。
 「自分が生きている間に、野口体操が理解され受け入れられるとは考えていなかった。それでも最近になってわかってくれる人も増えて、生きている間に少しは評価されているような気がしています。だからと言って日本全国に広めることは考えません。広めることに使うエネルギーを、体操の中身を深めることに注ぎたいのです。でも、このままでいいのかなぁ〜と思う時もありますよ」

 繰り返します。バラバラの個人では、どんなに熱い思いがあっても、力とはなり得ません。そのことを受けとめ共感してくださる方が、行動してくださいました。とりわけ法律家の近藤早利さんが事務局を快く引き受けてくださったことで、「エイヤッ」と、一気呵成に会として形にすることが出来ました。
 二十代の外国籍の青年から九十代の方まで、先生を知る方も知らない方も、会員になってくださることで、次のステージへの懸け橋が用意されました。 
 このことは画期的な出来事です。こうした人の集まりの「多様性」が、野口体操が求めているいちばんの真髄を象徴しているからです。さまざまに異なる土壌で生きる人々が、「野口体操」と呼ばれる身体文化の根もとに集まってくることが、混迷のうちにある社会に、生身のからだの実感をもとに創られるしぶとい文化を根付かせる最初の一歩になると思います。

 この機会に見えてきたことがあります。この会を構成してくださる方々の多様性の奥に、個別でありながら「身体の普遍」を見ることが出来たことです。実は、先生は普遍より 「個別」 を大事にしておられましたが、その思いを深掘りしてみると、体操を通して素足の下にある地球と繋がる生きものとしての「普遍の価値」と「個別の価値」が、矛盾なく包摂される地平が見えてきます。人間の価値観からすれば、矛盾としてとらえられる「コト」のなかに自然本来の命がある、と見たてる先生の思いが、皆さまのなかに脈々と流れていることも伝わってきます。そのことを手がかりに、これから出来ることを、「丁寧に・大事に・大切に」育て、積み重ねて、一人ひとりから発信できるコトを互いに磨き上げていく場としての「野口体操の会」になってほしいと思っています。
 微力ながら、若い方々の才能を引き出し、野口三千三が創発したかけがいのない身体文化を、社会に活かしてもらうお手伝いができればと願っています。
 会のモットーは『自然に貞く からだに貞く「自然直伝」』です。

平成二九年四月朔日 花の季節の上野にて    羽鳥 操